靴と料理/5月21日

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山梨県でワイン醸造業を営むご夫婦の靴。
【TOWN】と【BONNY】

ご夫婦そろって同じ靴屋さんで誂える。
僕のお客様には割合多いと思う。
作らせてもらう僕の幸福感はひとりよりもずっと大きい。

美味しいご飯や綺麗な景色、身体が動き出す音楽。
身体がよろこぶことはやはり好きな人を共有したいと思うのが当然。
靴もそんなものの仲間入りをしたい。

見た目に対する満足感も大事だけど、好き嫌いに個人差がある。
でも履き心地には個人差はない。
一人一人の足は違うし、同じ靴を共有はできないけれど
同じ重力、同じ足元、同じ皮膚、僕らには共通するものがたくさんあることも事実。
身体が感じていることに向き合えばいい。
良い靴はみな平等に心地よさを感じるだろう。

そんなこと考えていると
良い靴をつくりたい。いつもそこに着地していくけれど、
勘違いしてはいけない、最高の既成靴をつくることとは違う。

我が家のことを振り返ってみる。
今日、久しぶりに夕食は僕が担当した。
白米。味噌汁。ササミチーズソテー。温野菜サラダ。
同じ食材を分け合ってつくるけど
ひとりひとりに盛り付けするときは
量も違うし、切り方も違う。塩ひとつまみの最終調整も違う。
そういう意味では
みんな違うものを食べているけれど
みんなで美味しいねと喜びを分け合っている。

靴に戻ろう。
今回のご夫婦に作った靴は、
見た目かなり違うけれど、共通している素材や構造も多くある。
見た目は全く違うが本質をみれば、同じ靴である。
その同じ部分の質をどれだけ向上できるか。
そして「良い靴」を「とても良い靴」にするのが
最後の盛り付け。塩加減。
ここは本当に難しい。というのは割と失敗をする。
正解にはなかなかたどり着けない。

今日も最初のうちは「ご飯美味しいよ。」と家族は喜んでくれたが、
後半には手厳しい言葉も漏れてきた。。
他人を満足させることは本当に難しいと思った。

でも自分でも次こそはって思えて
相手も今度は期待しちゃお!って思ってもらえるから
これからも生きていける。