プラマイゼロ/3月23日 百掌往来メモ12

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今日の仕事。
これは再製作した靴。
前回製作した靴は「軽さ」に拘りすぎて、バランスが悪い靴をつくってしまい失敗でした。
今回は大事なバランスと支えるポイントに注意して製作できたと思います。

百掌往来 芯

プラマイゼロ

でも最も大きな失敗の原因は僕の思い込みにありました。
これまでこの方には10年間で数足の靴を作らせて頂いてきました。
その度に、お互い少しずつ歩み寄るように一足ずつ改良を重ねてきました。
その中で僕はしばらくお会いしていないこともあって
お客様の足はより良い方向にむかっている、という勝手な想像をしていました。
というもの、最初に靴を履いて頂いた時、とても嬉しそうに歩いてくれたことや
その後履けないと思っていた普通のスリッパでも歩けました!とか
とても靴職人冥利に尽きるお言葉を頂いて、
靴で人を活かすことができるんだと、自信を持ってしまった成功体験があったことが
思い込みの原因だと思っています。
実際は、あれから10年。時が経てば誰でも身体は少しずつ衰えていきます。
出来たことが出来なくなったり、もちろん反対もあるだろうけど
日々成長する子供とはちゃんと区別しないといけませんでした。

ここ数年間は、どれだけ人の力を引き出せる靴をつくれるかが
僕のテーマだったんだなぁと気付きました。
でもそれが行き過ぎて、引くことばっかり意識して
「優しさ」に乏しくなっていたのではないだろうか。
人は日々変わるもの。そのことも忘れていた。
+が良い。-が悪い。それも絶対ではない。
成長していくことが義務づけられる世界なんて考えただけで怖い。

今回の靴づくりを機に
これまでの僕が目指してきた靴づくりのベクトルが変わった気がします。
それはてのひらワークスの原点に戻ることでもあるのですが、
単純に振り出しに戻ったわけではなく、一周しきた感じです。
これからの靴にどんな「優しさ」を足していくか。
-には+を。+には-を。いつも0を目指そう。