愛するかたち/2月11日
若いころ、履きたいと思った素敵な靴は全部といっていいほど足に合わなかった。
靴のせいではなく、自分の足が大きいせいで。。
それなら自分に足に合わせて、履きたい靴をつくってみようと靴づくりを始めてみたけれど
足に合っているけれど、その靴を好きになれなかった。
不自然というか、正直カッコいい靴とは思えなかった。
はじめての靴が出来た時も、先生に「どうだ?(感動しただろ?)」と嬉しそうに声をかけてもらったけれど
少し笑って「はい。」と応えるのが精いっぱいで、内心はがっかりしていた。
思い返せばこの時、
自分は靴作家にはなれないだろうな、とあきらめていたような気がする。
自分のことを好きになれない。愛することが出来ない。そんな状態だったから
自分の靴から目を背けて
他者の靴をつくろうと気持ちを切り替えることが早かったし、迷いもなかった。
自分の足に再び向き合えるようになったのは
スターネットの馬場浩史さんとの靴づくりがきっかけだった。
馬場さんと僕は足がとても似ていて、靴を交換したりできるほどだった。
初めてお会いした時に、その時試作で履いていた自分の足型からつくったCOMMONを
「その靴貸してくれない?」と頼まれ、馬場さんが履いていたサンダルと交換したことはいい思い出だ。
馬場さんは僕の45年間で一番かっこいい人。
その人が僕の足からできた靴を履いて、喜んでいる。
世界が一変した瞬間だった。
定番COMMONの大きめのサイズは僕の足がモデルになっている。
とても良い形で、愛する形だ。僕はそう思っている。