てのひらワークスワークレポート~ザナチュラルシューストア静岡店編~

2022年6月18日、
『てのひらワークス』小林智行は、『ザ ナチュラルシューストア』静岡店、翌19日には東京の神宮前店、吉祥寺店へ。
お客様の足や暮らしについてじっくり話をしながら、
お店に並ぶてのひらワークスの6種の靴を丁寧に説明し、紹介していました。その様子をレポートします。

 <足の健康を考えるきっかけに>

『ザ ナチュラルシューストア』は約15年前に静岡県静岡市に店舗を構え、現在はこれに加えて神宮前店、吉祥寺店、MARK IS みなとみらい店(神奈川県横浜市)の4店舗を展開するシューストアです。

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――――『ザ ナチュラルシューストア』静岡店で行った受注販売会にはたくさんのお客様が来店。

足のアーチを自然な形に戻すサポートをするビリケンシュトックや、
上質な天然素材を使って履くほどに味わい深く変化するダックフィートなど、
足の健康と自分らしい豊かな暮らしを両立させてくれるような靴を取り扱っています。

『ザ ナチュラルシューストア』代表の種本浩二さんは、

「お客様に小林さんの靴を見てもらって、これをきっかけに靴の大切さに気づいていただけたら。
さらに、健康を維持するための『歩く』『走る』という行為までも一緒に見直すことができたらと思っています」

と話しています。

そんな『ザ ナチュラルシューストア』では、2019年より『てのひらワークス』の靴の取り扱いをスタート。
2021年11月からは岡山県の山間で工房を構える小林が実際に店舗に立って、お客様と直接話をしながら受注する機会を設けることになりました。
今年6月に行われた2回目の受注販売会には、足にまつわる悩みや希望を持ったたくさんのお客様が静岡店にいらっしゃいました。

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――――受注販売会の際、お客様の希望や悩みを丁寧にヒアリングする『てのひらワークス』代表・小林智行。

<一人一人の悩みや希望に寄り添う>

今年6月18日は朝から雨模様でしたが、開店する少し前に仕事を休んで駆けつけたというお客様が来店し、
それから間を空けることなく計11人がいらっしゃいました。
静岡県在住のお客様だけでなく、隣の山梨県から足を運んでくださったご夫婦も。

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――――靴に関する話や小林の工房での様子など、さまざまな会話を通じて『てのひらワークス』とお客様の信頼関係を築いている。

小林は30分から40分をかけてお客様と向き合います。

お客様の足や靴の悩みから始まり、『てのひらワークス』の靴をどんな場面で履きたいか、その方の健康状態、ライフスタイルなど、丁寧にヒアリングをしながら、左右の足の違い、座った時と立った時での足の違いなどを細かく確認していきます。

11人いれば11通りの悩みや希望があります。

あるお客様は、足が小さく、自分に合うサイズがないと相談にいらっしゃいました。
加えて、職業柄、長時間立っていることから起こる足のむくみや、腰痛も悩みでした。
『てのひらワークス』の靴は足なじみの良いヌメ革を使用していますが、小柄な方はなじむまで時間がかかるという問題もあります。

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――――お客様の要望やライフスタイルなどを伺った後、足型を紙にトレースしたり、採寸したり。気付いた細かな点などもメモする。

そこで、小林は、薄いコルクインソールをつくる提案をしました。
最初はインソールを入れた状態で履いて、夕方になってきたらソールを外して足のむくみの不快感を軽減する、
インソールがクッションになって腰への負担を軽減しながら足なじみをサポートするという二つの目的からでした。

また、別のお客様は、左右の足のサイズが異なるという悩みがありました。
そのため、大きいサイズの方に合わせて靴を購入している状況にあり、左の方の靴下が脱げやすいという話も。
小林がお客様の足を観察すると、体重を外側にのせてしまい、歩く際に足が外側にねじれてしまうことに気づきました。
ここ数年で手術を経験されて、体の左右のバランスが変わってきたことが関係あるかもしれないとお話しいただきました。

アーチが下がっていくことで、足の形が変わってしまう可能性があります。
そこで、足が靴の中でふわふわして定まらない状態にあるよりも、足が靴にピタッと収まってアーチがしっかりサポートされている方がお客様の足には良いとの判断になりました。

最後にいらしたお客様は、歩くと足裏が痛くなるという悩みを抱えていました。
その方の足は柔らかく、かかとも細いために靴に足が負けてしまい、なかなか合うものが見つからないため、どのお店に行っても最後にはオーダーを勧められてしまうとのことでした。専用の木型をつくるとなると一足の価格が高くなってしまい、なかなか手を出しにくい。

そこで、10年の歳月をかけて足によりフィットする男性用、女性用の木型を抽出してきた小林は、その方にベストな木型を選んだ後、足の状態に合わせて長さやかかとの高さなどの調整を行いました。
帰り際、「直接話せて安心しました。靴ができたら気軽にスッと履いて、たくさん出かけたいです」と話されていたのが印象的でした。

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――――靴のデザイン選びも、色選びもお客様にとって重要な時間。靴それぞれの特徴を考慮しつつ、自身のライフスタイルにぴったりな一足を選ぶ。

人の足には、個性があります。そのサイズはもちろんのこと、同じサイズでも足幅、かかとの大きさ、甲の高さ、足先の形などが人によって異なり、さらには個人でも左右の足に差があったり、バランスが違っていたりと抱えている悩みも千差万別でした。特に痛みなどを伴うことがなければ、何の問題もないと思っていた自身の足でも、話を進めることで問題が明らかになっていきました。

足の健康だけを考えれば、これらの問題を解決するような靴を誂えれば良いのですが、それぞれのお客様が靴を履くシーンもデザインの好みも同じではありません。健康に良くても気に入らないデザイン、色なら履きたくないというのが本音です。小林は心身ともに満たされる、暮らしを彩る靴を提供できるよう、6種類あるデザインの中から1つを決めた後も、かかとや足先のフィット感、靴の脱着のしやすさ、歩いた際のかかとの引っ掛かり具合などの微調整を丁寧に行って、その人に最適な靴がどうあるべきかを探りました。

注文を受けた後、岡山の工房に帰って誠意製作中。今回注文を受けた分の靴のお渡しは、9月以降になります。
それぞれの靴や足に関する悩みが軽くなり、この靴を履いて行きたいところに行けるライフスタイルをお届けできることを願っています。

――

今回、てのひらワークスの仕事をレポートしてくれたのは、
ソトコト2022年3月号の取材でお世話になったライター久保田真理さん。

僕から今回の仕事を相談した時は、二つ返事でご快諾くださり
当日もここには載せきれないほど、現場の声を拾い集めてくださいました。

僕の仕事は靴を提案すること、スタッフの仕事は受け渡しの取決めなど
どうしても事務的な確認ばかりになってしまう。

久保田さんが僕らとは違うお客様に近い立場で
その一人一人の靴を選ぶ前のモヤモヤした時間とか、選んだ後のワクワクの時間に
寄り添うような取材のお仕事は、僕にとってもお客様にとってもすごく有り難いことでした。

いつも展示会が終わってから
聞くチカラ、受け取る姿勢こそ大事なんだということを再確認します。

ひとつ与えることは、ひとつ奪うこと。
ひとつ受け入れることは、ひとつ手離すこと。