ＷＩＴＨＹ（柳枝）シリーズ【ＨＯＵＳＥ black】

「1日1足つくれるようにならないとね。」
益子の地で亡き恩人からのアドバイスを頂いて、もう10年が経つ。
一足にそこまで時間をかけてはいけないという意味で
廉価で広く普及できる数をつくることも
モノづくりの大事な大事なひとつの目標であると、教わった。

それからというもの
「１日１足」が額に烙印されたかのように、
靴づくりの日々はいつもこの言葉を意識していた。

「1日1足」簡単なようでとても難しい。
なんでも良いわけじゃない。中身がしっかり詰まってないと意味はない。
そして気兼ねなく使ってもらえるような親しみも必要だった。

睡眠時間とか家族の時間とか
何かを犠牲と引き換えにしながらずっと追い求めていた。

ＷＩＴＨＹシリーズは
１０年目にしてずっとイメージしていた靴が形になった。
柳のようにしなやかで強い靴。
人々の暮らしに必要とされる靴。
１日１足心地よいリズムで作れる靴。

天然酵母パンづくりがすごく面白い。
砂糖も油も使わない焼き屋さんのパンの味を目標にしている。
小麦を味わう最高のパンだと思う。
だから酵母で味が変わる。
その時の気温とか酵母の状態をしっかり確認して
焼き時間も発酵時間も同じではなく、毎回少しずつ改良してつくっている。
もちろん思い通りにいったことはない。
思い通りにいかないという点では、靴づくりも同じ。
だからこそ続けていられる。楽しい気持ちは褪せない。