60点こそ100点、100点なんて0点/4月15日 百掌往来メモ

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今日の仕事。
今日は一枚の革からできる限り多くのパーツを切り出す、頭を悩ませる半日だった。
革は一枚ずつ形が違うし、傷やムラも含まれる。繊維の方向も場所で異なる。
同じパーツを切り出すといっても、輪郭は同じでも中身はみな微妙な差がある。
この微妙な振れ幅をを最小に抑えるのが、今日の課題だった。

普段は、オーダーメイドで一足ずつつくるため、
均一性よりも適当性を優先して考えていて、それはそれで頭を使うところではあるが
適当性の場合は、目の前の一足のための最適な選択をすれば良いが
均一性の場合は、平均点を高くすることを考えるため、1足単位での最高点を取りにいってはいけない。
前者が100点を1足だけ、素直に狙えば良いことに対して
後者は20足を平均点80点目指して狙いさだめていく。
こうして考えると、いかに量産とは難しいものか。
頭をこれでもかと使う。革のことを本当によく知らなければならない、知識と熟練が必要だ。

そして思ったことがもうひとつ。
この世界の人工物のほとんどすべて、なんらかの妥協の産物であること。
世界中のひと、みんながすこしずつ妥協して譲り合って生きている。
でも今の世界は
本当は60点のものを偽って80点とか100点とかに見せている偽りの世界にいるような気がしてならない。
60点こそが100点であり、100点こそ0点、そんなこと思った。

そんな慣れない作業は、激しく体力を消耗する。
2時間も経たないうちに、息が続かない、頭が疲れて思考力が著しく低下した。
この数日ほとんどカフェイン飲んでいなかったが
久しぶりにミルを挽いてドリップして、
漂ってくるアロマに包まれ、何も考えず滴る雫を眺めたいなぁと思った。

身体としての脳が珈琲をくれ、リラックスしろと命令してきたのだ。