オリジナルをつくるということ。その2/1月31日 百掌往来メモ

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今日の日中は春のような暖かさだったので
ストーブの煙突掃除をしました。
綺麗にしたら、炎もメラメラパチパチ気持ちよく踊っていました。

昨日の続き。

会長のつくるアインラーゲンはよく足部骨折の患者さんにつくられた。
2ミリの純アルミ板をお手製の金台とプラハンマーで叩いて形づくる。
採型した足の石膏型を手刀で修正し、その型に沿わせていく。
時折、型とアルミを擦り合わせ、
アルミに付いた石膏の白い跡を確認しながら、形を見極めていく。
会長と僕は背中合わせに作業をしていて、
会長がお決まりの場所で叩き始めると、
いつも同じリズムで演奏しているかのような、それはなんとも心地よい金属音が響く。
僕は4年間、ずっとこのリズムを背中で聞いてきた。
自分でも叩き始めて1年でそれなりにつくれるようになったのも
このリズムが身体に浸み込んでいたからだと思う。

会長は足のことを本当によく知っていた。
詳しくはここで書くことはできないが、
資料もない時代、足を研究するために、解剖もしたらしい。
だから、会長がつくるものは全て生々しさを感じた。
すべてオリジナルだった。

この20年くらいで職人さんもだいぶ減ったらしい。
多数の人に合うような既製品が増えた。
それは綺麗で手作り感など全くなく、納品も早い。
いいことばかりだ。職人の仕事は無くても問題ないのかもしれない。

ある日、先輩がこんなことを言っていた。
「会長レベルの足底板をつくれる人はもう数人しかいない。
 てことは、大多数は他の方法でつくっている。
 それで問題ないという現状を考えれば、会長の仕事を続ける意味はないよね。」

確かに問題は起きないのかもしれないけれど
明らかに質は下がり、
誰でもつくれるけれど、誰も心から満たされない。
そんな乾いた世界へ向かうだろうなぁと、その時悲しい気持ちになったことを覚えている。

オリジナルをつくるということはとても大切なことなんだ。