境界線/5月12日 百掌往来メモ20

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今日の仕事。

百掌往来 
境界線

タンニン鞣し革は強い圧力と摩擦が生じた箇所が濃く変色する。
これは柔らかく動きやすい銀面がギュッと圧縮されるから。
特に少し水分を含んだ状態であれば
圧縮された後も元に戻りにくくなるため、その反応は大きい。
滑らかな艶がでることで汚れも付着し難くなることも特筆すべき効用。
それではすべて圧縮した方が良いかと問われると、その答えに難しい。

もしもその靴が誰にも使われない物で、ガラスケースに飾るものならそれでもいい。
「革靴を完成させるのは、使う人履く人だ」という考えに異論を唱える人は少ないと思う。
作り手が手を付けるところと、使い手が手を付けるところ。
その塩梅が丁度いい靴が、僕はとても素敵だと思っている。

その両者の境界線を引くように、僕は革を叩き艶を出す。
いつかその線が消えていくことを願いながら。