about KID vol.1/11月7日

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今日の仕事です。

今日は【KIDについて 誕生編】。

2014年3月、山梨県昌福寺が毎年のお彼岸に行っている虫切加持祈祷と合わせて
てのひらワークスの「こども靴の販売会」をさせて頂きました。
その時に3種類の子ども靴を紹介しました。
つっかけとサイドゴアとTストラップの3つです。
その中のサイドゴアが少しずつ改良されながら、いま【KID】と名付けられてのひらワークスの常連靴になりました。

当初は子ども靴を前提としてつくっていたため、革や底材料などは軽さや廉価を最優先していましたが
案外そのバランスや雰囲気の方をを気に入ってくれる大人の方からのご依頼もあり、
少しためらいもありましたが、大丈夫だろうと思い、そのままの仕様で大人のサイズでも製作も始めました。
でも3年くらいすると、やはり大人の体重だと2年でかなり消耗していることがわかってきて、底ゴムは新品に交換できても
アッパーはクタクタのままで、直しながら履き続けていこうって素直に思えないようになりました。

実はサイドゴアは多聞の靴をつくる以前から、僕も昔から好きな靴だったので大人用に作っていました。
ですがなかなか長続きするデザインが生まれてきませんでした。
そんな中でようやく子ども靴が出来た時に、こんなサイドゴアをつくりかったんだ。と
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最初に多聞に履かせた時、本当に嬉しかったことを覚えています。
その時に気付いたことは、今まで靴はどれも誰かの真似であったこと。
真似すること自体をすべて否定するつもりはないけれど、
真似することでどこか責任から逃げていたことがあったから、いつも後ろめたさに苛まされていた。
でもこのサイドゴアは違う。多聞に対して何の迷いもなく後ろめたさもなく作れた靴です。

だから大人のサイドゴアも、出来る限りこの子ども靴を世襲できるものにしたかった。
この小さなサイドゴアにどうしてもこだわってつくりたかった。
僕にとってサイドゴアは子どもの靴であり、KID。

そして、ようやく相応しい革に出会い、ほんの少しデザインも改良し
目に見えないところにも細かな気配りを怠らないように意識しながら作り続けてきた成果を
この秋、ナチュラルシューストアでお披露目できるところにたどり着きました。

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とここまで盛り上げてきましたが
ものずごく斬新なものができたわけでもなく、最新でもなんでもない
至って普通の靴です。

僕が今までつくってきた靴たちの欠片が集まってできたような靴です。
でも単純に足し算でつくったわけではありません。
フランスの文化人類学者レヴィストロースが言っている「ブリコラージュ」という考え方があります。
身の周りにすでにあるもので、もっといえば役に立たないもの。
でもそれはひとつひとつではガラクタに見えても、それを再編すると新しい価値や創造が起こる。
そうやって新しい道が開かれる。産業革命以前は、ずっとそのように人は進歩してきたといいます。

このKIDはひとつの終わりであり、それが始まりであり、
もっと遠くから眺めたら、改行するポイントでも、句点(。)でもなく、
読点(、)くらいのことなのだ。なにかを成し遂げたつもりはない。
でもその小さな小さな節目があるからこそ、僕は振り返ること、引き返すこともできる。