新しい相棒/4月28日
今年で靴の道を歩みだして20年目。
今じゃ考えられないが表参道で靴を学び、青山のカフェでバイトする小生意気な小僧だったな。
その時に買った包丁はもう手元には残っていないが、
刃幅2センチほどの小さな包丁を初めて手にしたときは凄く嬉しかった記憶が残っている。
それから幾度か包丁を替えてきたが
それらはすべて先輩からのお下がりやお得意先のノベルティなんかで
自分で購入したことがなかった。
何度か買おうとしたことがあったけれど
そこに投資できる余裕がなく、贅沢品だと思い込んで、あるものでなんとかしようと頑固だった。
てのひらワークスを始めてからこの貧乏性の自分がほんと嫌いだった。
昨年ようやく完成したオリジナルレザーは4mm以上も厚みがあるヌメ革。
この革の裁断と漉きであっという間に包丁が切れなくなる。その都度研げばいいさ、は甘い考えだった。
おかげで研ぐのはうまくなったが、手首の腱鞘炎が慢性的になってきた。
こないだは切れない包丁で無理やり漉こうとしたので、力が入りすぎて手元が狂い
危うく指を切断するところだった。間一髪無傷だったが、ヒヤッとした。
と、ここまで追い込まれてようやく、この状況どうにかしなきゃと考え始めるのも
僕の悪いところだ。
昨年、くらしのギャラリーさんで多鹿鋏製作所をしり
その時にお会いした2代目主人がお話ししてくれたことを思い出した。
「うちのは刃がすごく硬いから、刃付けは大変だけど一度刃が付けば長持ちするよ。」
自分に必要な包丁にもう出会っていたんだと思った。
早速問い合わせをしてみると、いま1本だけなら用意できるとのこと。
なんの躊躇いもなく注文させてもらった。
今日、それが届いた。
20年ぶりのマイホーチョーだ。
すごく嬉しい。