人の想像力が源/12月16日

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今日の仕事。
左右で先芯の張り方をかえる。
右は趾がまるまってしまう癖があるため、トゥボックスの高さを調整したが
あまり膨らませ過ぎると形のバランスが悪いので、
天井部に先芯を張らずに、多少触れても革が馴染むようにした。
趾が縮こまらず、すっと伸びていく未来の足をイメージして。

これまでずっと左右差の問題で
素足の時も、靴を履く時も、ただ歩くことに緊張感とか警戒心とか不安とか
いろいろ引きずっていたのではないだろうか、と思う。
そんなことないよ、とおっしゃられるだろうし、確かにご本人の自覚はないかもしれない。
でもタコができ、趾がグーのように力が入っている足に触れると
これまでの険しい道のりが伝わってきてしまう。
でも、とても力強さが備わっていて、気持ちも前向きで明るくて
苦労をしていることを微塵も感じさせない。健康な心の持ち主。

完全なヒトなどはいない。
全てを備えている人などいない。
みなあちこち欠けている。
欠けたところを黒く塗りつぶすのか、黄色で輝かせるのか、
空白にするのか、翼を描くのか。
その想像力を生きる力と呼びたい。

靴づくりにはそんな想像力が必要だ。
僕はヒトの想像力をお借りして、それを靴という形に変える。
想像力がなければ。