普通とはなにか/6月21日

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「普通の黒い革靴ならなんでもいいよ。おまかせ。」
隣家のおじさんに昨年から頼まれていた靴の製作にとりかかっています。
山で炭づくりをするために
25年以上まえに早期退職され、市内から吉備中央町に移られた先輩移住者です。
後輩である僕らのことをいつも気にかけてくれていて、
今回もはっきりとは言ってくれませんが応援のご注文です。
だって炭焼き人が今さら僕から靴を買う必要ないですからね。
どこでだって黒い革靴は買えます。

その気持ちに応えることのできる
普通の革靴がすぐに思い付かなくて、時間がかなり経ってしまいました。

普通につくろうと思っても
どうしてもおじさんへの個人的な想いが手に乗っかってしまう。
それが本当におじさんのためなのか、自分のためなのか、悩むばかり。
ようやく形を見出せたのは、
いい加減にしろよ!というもう一人の自分の叱咤があったから。
期日を今月と決めて、四の五の言わずに完成させろ!と。

ほんとそうだ。素直に今あるもので、今できることを尽くせばいい。
時間は限られている。僕も限られている。
いつからか僕は常に過去を超える最高の一足をつくれると思い込んでいた。
いつだって成長し、いつだって右肩上がりに階段を上がっていくものだと思い込んでいた。
仮にそれが今までと変わらないありきたりのものだとしても
それのなにが間違っているというのだろう。
今まで通りに、いつも通りに力を発揮することだ。
それが普通の靴をつくるということだ。